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2018.02.15

日本イコモス国内委員会が、名勝奈良公園における2地区の整備活用事業に関する提言書を発表


文化遺産保護に関わる国際的な非政府組織(NGO)である「国際記念物遺跡会議」(ICOMOS/ International Council on Monuments and Sites)の日本委員会は、2月13日、奈良県が名勝奈良公園内の吉城園周辺地区および高畑町裁判官官舎跡地で進めている整備活用事業について、奈良県知事および教育委員会に対し提言書を発表しました。

提言された4項目(提言書より引用)
1)民間事業者の参入を得て文化遺産の保存をはかること自体は、必ずしも否定すべきことではありませんが、この事業が貴重な国民的財産である奈良公園の保存・維持・管理にどのように役立つのか、国民、県民、市民の理解を得るにはいまだ説明が不十分です。10年の事業期間終了後の維持・管理の計画についても明確に示すことが必要です。また、土地の借料など、この事業による県の収益は奈良公園の保存・維持・管理に直接役立つ特別会計として運用するなど、本事業の効果が一般によく理解できる制度的な枠組みをつくることを提案します。

2)計画の宿泊施設等が都市公園内で認められる便益施設として位置づけられ、これが名勝の現状変更許可の判断根拠のひとつになっています。しかし、都市公園の便益施設はあくまで一般公園利用者にとって容易にアクセスできる施設であるはずですが、計画書や説明の限りでは、計画されている宿泊施設は一般公園利用者に公開される区域や期間が少なく、便益施設としての位置づけがわかりにくくなっています。日常的に公開する範囲を拡大するとともに、日常的には公開がむずかしい施設内であっても運用の工夫によって一定の公開ができるよう、手段や方法を示すことを希望します。

3)計画区域内の歴史的建造物・庭園・樹木の保存について、計画書の記述が曖昧で具体的な内容が不明確です。歴史的建造物についてはいずれも十分な調査と価値付けがなされておらず、具体的な保存計画もないままで、文化財指定がされていない建物については、歴史的外観を構成する部材さえ失われてしまう懸念があります。これらが適切に保存・整備されることによって、この事業計画全体の価値がより高まるという観点にたって、事業が慎重に進められることを希望します。

4)現在、事業は基本設計の段階であると聞いていますが、できるだけ速やかに文化財専門家による適切な調査と再評価、保存・整備のための技術的な指導が受けられる体制づくりが求められます。文化財の保存修理等に経験と蓄積を持つ県文化財保存課職員も含めた総合的な庁内体制を組むことも早急に必要とされます。このような体制を整備した上で、奈良県が2地区における事業の監督や指導を厳正に行い、文化財の保護、世界遺産及びバッファゾーンの保全、都市公園の適正な管理等についての責任を引き続き適切に果たされることを希望します。

また、“この事業は名勝指定地、歴史的風土特別地区、風致地区および世界遺産の緩衝地帯において、県が民間事業者の参入を得て大規模な現状変更行為を主導するものであることからすると、一般的な文化遺産の保存・活用の事業に比べてよりいっそう強い模範生や公共性が求められます。”と提言。

 

日本イコモス国内委員会による提言書(PDF)

 

 

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