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2017.12.19
公益財団法人 日本自然保護協会が文化庁 宮田長官および奈良県 荒井知事に対し意見書を発表
WWFジャパンにつづき、日本自然保護協会からも「奈良公園内の宿泊施設整備計画」に関する意見書が発表されました。
以下、日本自然保護協会のホームページより(2017年12月13日掲載):
“今般、奈良公園において公園整備の一環として進められている宿泊施設の整備計画については、自然環境の保全と歴史・文化財の保護の観点から大きな問題があることから、以下の意見を申し述べます。
1. 当該地は、名勝奈良公園の中にあり、市街地との緩衝地帯としての価値をもっています。文化財保護法ならびに古都保存法の目的に鑑み、市街地からの影響回避を最優先すべきです。
奈良市高畑町の当該地は、奈良時代に平城宮の造営とともに建設された興福寺の旧境内にあり、隣接する東大寺の旧境内にも近く、わが国の歴史上きわめて重要な場所であることは周知のことです。ここには、中世の興福寺の子院の松林院の遺構や近代の庭園遺構が残されています。興福寺と東大寺の旧境内に春日山を加えた500ヘクタールに及ぶ広大な地域は、明治6年の太政官布達にもとづいて公園とされ、その後、史蹟名勝天然紀念物保存法(現在の文化財保護法)によって、名勝奈良公園に指定されています。当該地はわが国の公園緑地の歴史のなかできわめて重要な指定地に含まれています。
興福寺と東大寺の境内およびそれに続く平城京を土砂災害から守るために春日山断層崖の急斜面の森林を禁伐にして今日まで保護してきたのが文化財保護法にもとづく特別天然記念物春日山原始林です。大都市に近接して広大な原始林をもっていることは、きわめてまれなことです。当該地は特別天然記念物春日山原始林にも近く、生物多様性保全の視点からは緩衝地帯として位置づけられます。
当該地は、「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」(以下、古都保存法)による「歴史的風土特別保存地区」に指定されていますおり、同法第11条第1項に基づき、平成17年に奈良県が購入したものです。
当該地は、都市計画法の市街化区域と隣接しており、当該地区での新規の建築は市街化の侵食ともいえます。新規の建築、地域経済の活性化などは、市街化区域で優先すべきであり、「歴史的風土特別保存地区」では新規の大規模な建築は避けて緑地の保存を優先すべきと考えます。
2. 生物多様性にとって、緩衝地帯は重要な役割を果たしています。
「高畑町裁判所跡地に係る調査結果一覧」では、対象地域で23種の鳥類、95科275種の植物(植栽種を含む)が確認されています。鳥類では、繁殖個体の減少傾向が指摘される重要な6種が確認されています。これらは、越冬期に低地に移動することから観察される機会が増える種であり、生物種の保護では、生息地の分断や細分化が大きな損失となります。自然環境はできる限りまとまりとして保全していくことが重要であり、周囲の緩衝地帯は生物多様性保全にとって重要な役割を果たしています。”