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2017.03.24
3月13日、文化庁に嘆願書を提出

当会代表の辰野が前滋賀県知事の嘉田由紀子氏(ほか2名)と一緒に「文化庁」に陳情のため訪問しました。

奈良県は「国の名勝指定の変更許可」を文化庁から得なければなりません。許可されなければホテル建設は止まります。どう考えても許可するべき正当な理由はありません。担当官は粛々と当方の言い分をお聞きいただきました。

賢明な採択が下されることを切望します。
 

文化庁への嘆願書
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文化庁で説明した当会の主張

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奈良県の主張する「高級リゾートホテル建設」の理由


県=「奈良にはホテルが足りない」
◎ 資料でお示ししたように、日本政策投資銀行の調査によれば、2015年度のホテル客室稼働率は、大阪市、京都市、神戸市と比べて奈良市は極端に低く、需給のバランスで客室が大幅に余ったとされています。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックを経た2030年においても、大阪市や京都市では客室が不足する予測のなか、やはり「奈良では余る」と試算されています。
仮にホテルの部屋数が足りないとしても、10室から20室のホテル建設が奈良市のホテルの部屋不足解消につながるとはとうてい考えられません。その事業のために、厳しい法律で守られてきた1.3ヘクタールもの県民の財産を私企業による「営利事業」として独占させることに「大儀」はありません。

県=「上質な高級ホテルなら環境が守られる」

◎ ホテルの質や規模の問題ではありません。「国の名勝地指定」など、厳しい規制で守られてきたこの地の規制を除外する「大儀」があるかを議論すべきです。この素晴らしい環境にある名勝地ならどのようなホテルを建ててもその物件価値は高く評価されるでしょう。しかし、それを「しない」ということで守られてきた先人たちの見識と自制こそ求められるべきものであり、それを遵守するのがむしろ自治体の努めです。
また当該地には、ムササビや野鳥など多くの動植物が生息していますが、学者による環境影響評価さえ行われていません。

県=「埋蔵文化財の調査は終了し、特段の埋蔵物は発見されなかった」

◎ 県はホテル建設予定地と称する敷地(特定できない=開示請求に対して、すべて墨で塗りつぶされた施設の配置図のみで公開しない)を平成26年11月5日から同年12月25日までの期間に発掘調査を行ったとあります。注目すべきは古代の須恵器、土師器、瓦片が発見されたことですが、調査は数日間のみ(隣接する万葉荘の2Fから調査地の様子を望むことができた)、このような短時間の調査では、地面の表面を掘り起こしたのみで、充分な調査がなされたとは考えられません。
憂慮すべきは、この直後に所轄機関「橿原考古学研究所」が奈良県教育委員会から奈良県「知事部局」に移管されたことです。本来、独立した立場で慎重に発掘調査を行うべき部署が、何ゆえこの時期に知事が直接人事権を発令し、事業方針を決定する組織にする必要があったかという疑問です。これについての回答はいまだ得ていません。

県= この計画に対して「反対者はいない。むしろみな喜んでいる」

◎ 県は奈良公園整備計画検討委員会(貴庁の担当官が「アドバイザー」として出席されている)において、県が住民説明を行う前から「住民の反対は無い」「むしろ賛成意見ばかり」であると説明されています。これは県による虚偽の説明です。このような「ホテル建設ありき」の「県の意向に誘導する」審議は不当です。民意の絶対的多数は「反対」です。住民説明会会場での発言者の意見の100%が懸念や反対でしたが、その事実を県は黙殺しました。さらに県は、「建設に賛成ありき」の説明会でなければ、以降話し合いは持たないとまで明言され、わずか二度の説明会以降、住民との接触を断絶しました。これを受けて、私たちは「高畑町住民有志の会」「奈良公園の環境を守る会」を結成しました。そして開始した「署名活動」における民意(3万筆以上)をお聞ききとどけください。

県=「奈良公園には、すでに旅館がある」

◎ 奈良公園には「江戸三」「青葉茶屋」などの旅館が存在します。しかし、これらは「法規制ができる前」に営業を始めていた業者であり既得権益者であります。規模も小さく施設が老朽化しているため、水道管や下水管などの修理・改築の許可を県に申請しても容易に許可がもらえないという現状があります。その一方で、同じ公園内に高級ホテル(規模は遥かに大きい)を新規に建設しようとすることに、既存の旅館経営者は大きな戸惑いと怒りを感じています。(しかしながら、彼らは、公園内の敷地を県から借りている弱い立場のため、県からの粛清を恐れて、県に対して直接不満の声を上げられません)
県はそれら既存の宿泊業者への支援を行い、まずその利活用を推進すべきです。
◎ 上高地のホテルや山小屋など、国立公園内の宿泊施設に関しては「自然公園法」によって主務大臣(環境省)によって適正に設置が認められているものであり、「都市公園」とはその主旨や条件が異なります。「山岳地帯」という地域の特性もあり、宿泊を伴う公園利用者の生命の安全性の観点からもその必要性が高く、奈良公園の場合とは、まったく異なった条件でもあります。
◎ 当該地からは商業ゾーンまで徒歩で10分以内の至近距離にあります。
ホテルの建設が必要とするのであれば商業ゾーンで計画すべきであり、当該地に建設する必要はまったくありません。
現状の商業ゾーンには、高さ制限や建蔽率、容積率などの建築規制が厳しく採算性が悪いため、ホテル経営が難しく、老舗の旅館(魚佐旅館)でさえ経営破綻しています。規制緩和を求めるなら、公園内ではなく景観に配慮した商業ゾーンでの規制緩和です。

県=「都市公園の利便施設として宿泊施設は認められている」
◎ 都市公園内において認められた宿泊施設は、運動公園や研修を目的にした施設(奈良県生駒市立「生駒山麓公園」など)であって、リゾートホテルは対象ではありません。奈良公園の利用者にとってリゾートホテルは必要ではありません。繰り返しになりますが、宿泊は規制区域外近隣の施設で十分まかなうことができます。
現在、都市公園法の一部改定のための法案が検討されていますが、これは、「保育所」などの福祉事業を念頭においたものであって、リゾートホテルはその対象ではありません。

県=「当該地に隣接して大きな建物がすでに建っている」
◎ 県が指摘する建物は「万葉荘」と思われます。およそ40年前NTT(当事:電電公社)の社員寮(保養所)として建てられたものです。数年前、NTTから辰野が個人資産として購入しました。この土地は、県が計画する当該地同様、「奈良市風致地区条例による第一種風致地区」指定による規制、即ち住居以外の用途使用は認められておりません。10室以上を有する宿泊施設ですが、代金を徴収して宿泊させる営業は行っていません。現在は、近しい友人との交流の場として利用しています。(キャロライン・ケネディ前駐日アメリカ大使や、ジャン・フランソワ・パロ駐日スイス大使、ラファエル・コント、スイス連邦上院議員議長など、多くの要人にもご利用いただいています)
*このように営利事業が認められない万葉荘に隣接し、さらにその数倍厳しい法規制(万葉荘にかかる規制は「風致地区条例」のみ)のある当該地において、県が選んだ民間事業者ならホテルを建設し営業が許されるという道理は百歩譲っても理解できません。
*この開発に関して、県が敷地の外溝や施設内整備(日本庭園の復旧)などに、少なくとも10億円を超える血税を投入して民間事業者の事業を支援することに県民は怒っています。ちなみに業者が県に支払う宿泊施設の借地料は月額1平方メートル当たり138円(455円/坪)、飲食施設103円(340円/坪)と常識を逸脱した破格であり、業者に対する利益供与は多大です。
土地の賃貸契約期間は10年とされていますが、県がいう高級ホテル建設に要する民間投資額を勘案すれば、10年での減価償却は現実的ではありません。更新することを前提にした建前契約となることは必定です。そのようなことになれば、貴重な県民の財産である景勝地を私企業の営利活動のための永続的な独占利用を許すことになりかねません。

上記のように「開発」に関してさまざまな問題を抱えた奈良公園内の当該地に、わずか10室から20室のホテルを建設することに、なぜ知事はそこまで固執するのか?
住民の疑念はさらに深まっています。

以上、現在知りえる限りにおいて、奈良県が示されている「現状変更」を求める根拠に対して、私たちの所見と反論を述べましたが、もしこれ以外に県が根拠をお示しになられた場合には、それに対する私たちの所見や反論をお聞きいただく機会が与えられることを重ねてお願い申し上げます。

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