呼びかけ人代表より
「保全」すべきと「活用」すべき場所の住み分けを守らなければならない
近年のインバウンドツーリズム「観光立国」の国策のもと、自然環境や文化財を観光資源として活用することにたいして決して異論はありません。しかしそれが無秩序に行われてはならないと考えています。「保全」すべきと「活用」すべき場所の住み分けを守らなければならない。
この場所(奈良公園)を我々は、「活用すべき場所」ではなく、「守るべき場所」と認識しています。この点が知事のお考えと異なる点です。
当該地は「国指定の名勝」「文化財保護法」「古都保存法」「歴史的風土特別保存地区」「奈良市風致地区条例、第一種風致地区」に指定され、厳しいしばりの中で、地元住民は不自由を強いられながらもこれまで受け継ぎ守ってきた環境です。
無論この法律はいまも存在し、市民には厳しく適応され規制されています。賛否の意見があることは当然だと思います。ただ、そこに住む地元住民のこの地への思いと、それ以外の方々との意識に温度差があることも事実です。この種(温度差)の問題は、沖縄や福島のように、本件に限った問題ではありません。まして、本件のような問題は、通り一つ隔てるだけで、思いの温度差があることを感じております。
県がどのような建物を建てようとしているか、これまで具体的に開示されていませんでした。住民の質問に対しての回答は、「まだ何も決まっていないから示せない」とのことでした。ようやく昨年12月26日プロポーザル公募の段階で基準が告知されましたが極めて一般的な内容です。現在、県に対して公式に情報開示を求めていますが、今日時点で、いまだ開示を受けていません。県の住民への説明会は過去2回されましたが、以降の説明会は行わないとの回答です。住民の不安に対する答えをいただける場を更に求めていますが、応じていただいていません。住民は県に対して不信感をもち、さらなる不安をつのらせています。そんな切羽詰った状況の中で「建設反対」という究極の選択をせざるを得なかった当方の思いをご理解いただければ幸いです。我々は、これからもあきらめず、県に対して「話し合い」を望んでいきます。
冒頭に述べました、「観光立国」「インバウンド」「地方創生」の国策のもとに潤沢な予算が地方に交付されています。それらの事業を推進して、地方がもっと元気になってほしいと私も考えていますが、この国策による「予算=金」が、現場で一人歩きして無秩序に開発が進むことに不安を感じています。この問題は、わが国が今向かおうとしている「あるべき国の姿」を考える機会を与えてくれたものと私は考えています。
「奈良公園の環境を守る会」・「高畑町住民有志の会」
呼びかけ人代表・辰野 勇