リゾートホテル開発の経緯
2016年3月23日:
第1回住民説明会(会場:奈良春日野国際フォーラム甍)
奈良県の担当者から説明資料(資料① 【pdfファイルで見る】)が配付された。この時、初めて地域住民が奈良県の計画を知る。説明を受けた住民からは多くの質問が出たが、そのほとんどは計画への疑問の声であった。
● リゾートホテル建設予定地:奈良県資料より(クリックでグーグルマップを表示)
【主な質問と回答(要旨のみ)】
(住民):そもそも文化、自然環境への配慮から、きわめて厳しい規制があるこの場に、ホテルを建設することができるのはおかしいのではないか?
(奈良県担当者):有識者の検討会にはかって手続きを踏めば問題ない。
(住民): どのような建造物を計画しているのか? 説明資料に記載された宿泊ゾーンと称するエリアに計画されている建物は「平屋」と明記されているが、イメージ写真は明らかに2階建てのものが小さく添付されている。どちらが正しいのか?
(奈良県担当者):詳細は決まっていないので具体的な構築物の内容は説明できない。それはこれから詰めていく。
(住民):計画のホテルは民間の投資で建設するとされているが、その候補として具体的な企業「星野リゾート」の名前が出されたが、すでに水面下での交渉がなされているのではないか?
(奈良県担当者):現段階で特定の企業は想定していない。
(住民):それではなぜ、そのような企業名を出して説明されたのか?
(奈良県担当者):事業体に関しては、プロポーザル方式で公募する。
(住民):「平屋」といい、具体的な企業名を出しておきながら、そのような説明では納得できない。県の進め方に対して、きわめて不審の念を抱かざるを得ない。具体的な構築物の詳細はおろか、その概要さえも知らされずに、この計画を認め、賛成するわけにいかない。もっと詳しい情報を教えて欲しい。この後、あらためて詳細説明をしてもらえるのか? 説明会が開かれるのなら、もっと地元住民が集まりやすい会場を設定して欲しい。
(奈良県担当者):あらためて住民の皆さんが集まりやすい会場で説明会を開く。
2016年6月26日:
第2回説明会 (会場:飛鳥公民館)
3カ月以上の間、住民への説明はされず、ようやく第2回の説明会が開催されたが、説明の内容は第1回の説明会と同じ内容で、集まった住民からは前回同様の質問がなされたが、県からは納得のいく答弁は得られなかった。
【主な質問と回答(要旨のみ)】
(住民):奈良県が国から購入した当該地を「奈良公園」に編入して整備するということだが、説明資料の多くのページをさいて、旧庭園跡地を復元することと飲食ゾーンの説明をされている。それに比べて宿泊ゾーンの説明が少ない。公園の用に呈するという意味で、庭園の復元や休憩所の設置は認められても、ホテルが公園の用に呈するとは考えられない。 ホテルを除いた計画にして欲しい。
(奈良県担当者):ホテルありきの計画だ。ホテル無しでは考えられない。反対ありきの意見は聞き入れられない。
(住民):県の答弁とは信じられない。「星野リゾート」の話はどうなっているのか?
(奈良県担当者):星野リゾートの名前は忘れてほしい。
(住民):復元した庭園は、公園の一部として一般市民が自由に活用できるのか? プロポーザルで指定された事業者の私設活用の一部に組み入れられて一般市民が自由に利用できなくするのではないか?
(奈良県担当者):どのように活用するかは決まっていない。
(住民):何も決まっていない状況で、無条件で住民は賛成できない。
(奈良県担当者):当該地の土塀も老朽化して、以前にも敷地内の立ち木が折れて通行人に被害を及ぼしたが、今回の整備計画を実行しなければ、当該地はそのまま放置されることになるがそれでもいいのか?
(住民):それはホテルを建てることとは無関係、当該地が県の管理である限り、敷地内の適切な整備や歩行者への安全管理は、県の責務ではないのか。
(奈良県担当者):整備計画に反対ありきでは困る。あらためて勉強会を開きたい。
これ以降、県は勉強会おろか、説明会も開催する意思がないむね、県議会議員に説明していると理解している。
なお、県議会での議員による質問に対して、県担当者からは、「特段の反対意見は出ていない。」との説明を繰り返しているという。
当該地に隣接して居住する、高畑町山ノ上自治会、とりわけ近隣住民の不安は高まり、集会を開いて話しあった結果、山ノ上自治会会長名で荒井知事に宛てた、地元住民の本件に関する意見と質問状(資料② 【pdfファイルで見る】)を8月10日付けで送付した。ところが、2カ月以上経過してもこれに関する返答は一切なく、時間だけが経過して行くことに、住民は更なる不安を募らせた。
そんな中、第2回目の検討委員会(資料③【pdfファイルで見る】)が10月31日に開催されることを知った。
検討委員へは、住民からの不安の声や「反対」の声は一切説明されていないことを知り、急遽、先に知事宛に送付した意見書と質問状を添付した意見書を委員各人に送付した。さらに、委員会当日にも同資料を委員各位に手渡した(資料④【pdfファイルで見る】)。1年以上開かれなかった第2回目の審議会当日は、委員総数12名中5名が欠席して審議会が開催されたという。審議会はしゃんしゃんで終了し、「これをもって最終の審議会にする」とされた。住民から県担当者に直接電話で「今後、どのように計画を進めるつもりなのか? このような強引な手法で住民の意見を黙殺して計画を進めようとするのなら、弁護士に相談して専門的な所見で反対運動を進めるがいいのか?」と迫ったところ、県担当者は「どうぞ、おやりください」と、まるで木で鼻をくくったような返事が返ってきた。
2016年12月10日:
「奈良公園の環境を守る会」、「高畑町住民有志の会」の結成
文化的、自然環境的にもこれまで守られてきたこの環境を子々孫々に残すためにも、地元住民の取りうる対抗措置を法律的、専門的立場で助言を得るべく、田中幹夫弁護士に、高畑町山ノ上自治会会長名で委任状を託し、荒井知事宛に3カ月以前に送付した質問状に対して1週間以内に返答するよう、内容証明郵便で要求したが、2週間を経過しても返答がなかった。
県の計画推進スケジュールは粛々と進められ、本件の事業者の決定に向けて「事業計画のプロポーザル」の公募を近日中に行うとの情報をうけた地元住民は早急の対応策を講じる必要性に迫られた。ことここに至り、「高畑住民有志の会」を結成して広く地域住民の賛同を得ながら「奈良公園内のホテル建設反対運動」として対応することに決した。同時に、この問題を奈良市高畑町の町民だけのものとせず、日本全国に奈良公園の環境保全を訴えるべく「奈良公園の環境を守る会」を結成することにした。呼びかけ人として、椎名誠氏、野田知佑氏、渡辺一枝氏、夢枕獏氏、風間深志氏、天野礼子氏、さらに地元住民でもある辰野勇氏も、本件計画の推進に対して反対を表明するに至った。「奈良公園の環境を守る会」は全国組織とし、地元「高畑町住民有志の会」と協力して反対運動を推進することで合意。12月10日、当該地の向かいに位置する万葉荘の敷地内に「リゾートホテル建設反対」の横断幕を設置し、同じく隣接住民の宅地内に同様のノボリを複数設置して住民の民意を形に表した。
内容証明書に対する回答書(資料⑤【pdfファイルで見る】)は、期限をさらに1週間以上遅れた11月22日到着したが、その内容はきわめてあいまいで詳細を明らかにするものではなかった。これを受けて、詳細な内容を知るために、田中弁護士から11月25日付けで情報公開資料の開示請求(資料⑥【pdfファイルで見る】)を12月2日の期限で請求したが返答なく、ようやく12月8日付けで、「開示決定等の期限の延長」という通知書(資料⑦【pdfファイルで見る】)が2週間以上も遅れて送付されてきた。返答の内容は、開示期限を60日間延長して開示するというものだった。遅延の理由は「行政文書の特定および審査に時間を要するため」とされていた。公文書の開示に60日間もの時間を要する理由が納得できず、開示すると都合の悪い案件を精査する必要があるのではないかと疑わざるを得ない。
2016年12月12日:
奈良県県議会における山村幸穂県会議員から荒井正吾知事への質問に対する応答
【主な質問と回答(要旨のみ)】
(山村議員): これまで住民からの反対は一切ないとの説明を受けてきたが、このような住民からの反対運動があるのではないか? (当該地に設置された横断幕=資料 の写真パネルを提示)
(荒井知事): 反対があることは承知しているが、きわめて少数のもので、多数の賛成意見がある。
(山村議員): 少数であれば、住民の意見は無視するのか?
(荒井知事): 賛成の意見も多数ある。
(山村議員): 環境の保存に関しては、いかように考えているのか?
(荒井知事): 高級ホテルを建設すれば、環境を保全できる。
信じがたい答弁である。知事が言う少数(反対)とは、いったい何人の人数をさして少数というのか?
以前、奈良公園の景勝地「若草山」にモノレールを建設する計画を発表した荒井知事の環境に対する認識の甘さを改めて認識した答弁である。(さすがに、「若草山モノレール計画」全国からの反対運動で知事も引き下がらざるを得なかった)。インバウンドツーリズムの促進、2020年東京オリンピックを控えて、奈良にホテルが必要だとの時流は理解できても、それが、この地である必要性はありません。当該地は「国指定の名勝」であり、「文化財保護法」や「古都保存法」に基づいて「歴史的風土特別保存地区」に指定されています。このような厳しい規制地域には本来一切の建造物を構築することは認められないはずです。さらに、「奈良市風致地区条例」によって「第一種風致地区」に指定され、一切の商業施設の営業は認められていない地域でもあります。この環境に県は、さまざまなルールを捻じ曲げてでもホテルを建設しよういうのは横暴以外のなにものでもなく、大儀は微塵もない。情報によれば、事業を推進する対象企業に「アマンリゾート」の名前が挙げられている。もしこれが事実で、水面下で談合が進められているとしたら、決して許されない行為である。
2016年12月19日:
「奈良公園」内におけるリゾートホテル建設反対署名活動を開始
奈良公園は、日本国の宝であり、世界遺産の登録を受けた世界の財産です。子々孫々に悔いを残さないため、また、知事が言う少数の反対意見ではなく、日本全国の多くの見識ある皆さまの民意として、荒井正吾奈良県知事にお示しすべく、署名活動を開始しました。
2016年12月22日:
当該地の外壁に測量業者が測量を開始
付近の住民からの情報提供で発覚。住民の質問に対し測量業者は「設計会社からの依頼で塀のやり変えのための測量です」と答えたという。
過去には(知事公舎向かいの開発時)、工事の表記として「塀の補修工事」とし、通りから見えないように“目隠し養生”し、敷地内の工事を進めた経緯がある。
2016年12月26日:
奈良県が当該地開発事業者の募集を開始
奈良県が奈良公園内の「高畑町裁判所跡地」を整備する事業者の募集を開始しました。いかに自然豊かな土地であるかよく分かる航空写真付きで掲載されています。
奈良県ホームページ( http://www.pref.nara.jp/item/171881.htm )
着々と進められるリゾートホテル開発を一刻も早く止めるために、署名活動とソーシャルメディアによる拡散のご協力をお願い致します。
2017年1月11日:
奈良県より行政文書が開示される(一部)
昨年12月18日付けの「開示決定等の期限の延長」通知書により開示期限を60日間延長されていた行政文書が、ようやく開示される。開示された行政文書は以下。(資料⑧【pdfファイルで見る】)
1. 「高畑町周辺地区整備事業」業務委託に係る文書
・平成28年3月9日付け土木設計業務等委託契約書
・平成28年3月31日付け土木設計業務等委託変更契約書
・平成28年4月26日付け登録内容確認書(業務実績)
・平成28年3月9日付け業務工程表
・平成28年3月9日付け課税事業者届出表(課税期間 平成28年10月1日から平成29年9月30日まで)
・平成28年3月9日付け課税事業者届出表(課税期間 平成27年10月1日から平成28年9月30日まで)
・平成28年3月9日付け管理技術者通知書及び経歴書
・平成28年3月9日付け照査技術者通知書及び経歴書
2. 平成28年3月10日付け調査職員任命伺(業務番号 平成27年度 809-委-2)
3. 平成28年4月1日付け調査職員任命伺(変更)(業務番号 第809-委-2)
2017年1月12日:
奈良県荒井知事へ「リゾートホテル建設反対申し入れ書」および「建設反対署名」7,374名分を提出
奈良県庁にて、申し入れ書および署名の提出。当日、荒井知事不在により知事代理として奈良公園室長に提出し、その後、県庁内記者クラブにて記者発表を行いました。
※署名活動はホテル建設計画が中止されるまで続行します。
提出署名数(1月11日までに集まった署名を提出):
直筆による署名・・・2,237人
オンライン署名・・・5,137人
提出署名合計数・・・7,374人
2017年1月23日:
奈良県より行政文書が開示される
昨年11月25日付けで請求していた奈良公園内に予定しているリゾートホテル建設計画に関する行政文書が、奈良県による「開示決定等の期限の延長」を経て、ようやく開示されました。開示された行政文書は以下。
しかしながら、最も重要な文書「高畑町裁判所跡地の整備計画における基本コンセプト、利用ターゲット、施設の建築面積、建物配置、収支計算等提案募集の内容及び審査基準に関する記述」は開示されませんでした。開示しない理由として、県は「県の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務または事業の性質上、当該事務又は事業の適切な逐行に支障及ぼすおそれがあるため」、としています。
【開示された行政文書】
高畑町裁判所跡地保存管理・活用事業の検討に係わる以下の文書
・ 平成27年8月7日付け第10回奈良公園地区整備検討委員会配付資料(■ pdfファイル)
・ 平成28年10月31日付け第12回奈良公園地区整備検討委員会配付資料(■ pdfファイル)
・ 平成28年3月23日付け高畑町裁判所跡地の整備に関する地元説明会配布資料(■ pdfファイル)
・ 平成28年6月26日付け高畑町裁判所跡地の整備に関する地元説明会配布資料(■ pdfファイル)
・ 庁内検討会議の資料(開催日:平成26年5月27日、同年7月24日、同年9月17日、平成27年5月15日、同年7月13日、同年10月30日、平成28年5月26日及び同年9月15日)(■ pdfファイル)
・ 奈良公園施設魅力向上事業(高畑町裁判所跡地土地利用基本計画策定業務)業務報告書(平成26年度業務)平成27年3月(■ pdfファイル1 / ■ pdfファイル2 )
・ 奈良公園施設魅力向上事業(高畑町裁判所跡地土地利用基本計画策定業務)業務報告書(平成27年度業務)平成27年9月(■ pdfファイル1 /■ pdfファイル2 / ■ pdfファイル3 )
・ 奈良公園施設魅力向上事業(高畑町裁判所跡地土地利用基本計画策定業務)業務報告書 平成27年4月1日(■ pdfファイル)
・ 奈良公園施設魅力向上事業(高畑町裁判所跡地土地利用基本計画策定業務)業務報告書 平成27年7月1日(■ pdfファイル)
・ 設計打ち合わせ・協議記録簿(平成27年3月9日(追番 1-1)、同月20日、同月9日(追番 3-1)、平成27年4月17日、同年5月28日、同年6月23日、同年6月26日、同年28日、同年9月9日、同月25日、同月30日及び同年4月15日)(■ pdfファイル)
【開示されなかった部分】
・ 高畑町裁判所跡地の整備計画における基本コンセプト、利用ターゲット、施設の建築面積、建物配置、収支計算等提案募集の内容及び審査基準に関する記述
【開示されなかった理由】
・ 県の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務または事業の性質上、当該事務又は事業の適切な逐行に支障及ぼすおそれがあるため
2017年1月19日:
奈良市の仲川元庸市長へ「お尋ね」を提出
当該地の開発計画について、「奈良公園」の所在地である奈良市の見解を聞くために、現市長の仲川氏宛に「お尋ね」文書を提出しました。
当該地は、歴史的風土的東区別保存地区に該当し、法律・条令により開発そのものが厳しい規制に置かれており、奈良市においてもこれらの法規を遵守する義務があります。
市長宛の「お尋ね」文書(pdfファイル)
2017年2月2日:
奈良市の仲川元庸市長より「お尋ね」に対する回答書
1月末日を回答期日として問い合わせを行っていた奈良市長に宛てた「お尋ね」ですが、2月2日市長より回答がありました。
● 計画に対する奈良市の見解(一部抜粋)
貴重な歴史・文化遺産である中世の遺構や庭園遺構の保存活用を基本として「食と賑わい」、「交流・滞在」をテーマとした土地活用が図られるものであり、当然、周辺環境への配慮や土地利用の規制に合致した跡地整備がおこなわれるものであると考えています。
● 計画地に関係する法律等
・文化財保護法
・都市公園法
・都市計画法
・古都保存法
・奈良市風致地区条例
・建築基準法
● 開発申請について
当該事業については都市公園地区において都市公園事業として実施されるため、都市計画法第29条第1項第3号が適用され、開発許可は不要となります。
奈良市長からの回答書(pdfファイル)
2017年2月7日:
奈良市の仲川元庸市長へ「再度のお尋ね」を提出
2月2日付けで「お尋ね」に対する回答をいただきましたが、当会としては全く理解できない内容で、市民に理解できる説明を再度奈良市長宛に提出しました。
1. 計画に対する見解
奈良県の計画を肯定されておられるようですが、あらゆる規制に反してホテルを建築することに賛成ですか。
2. 計画地に関係する法律
文化財保護法ほか法律等が示されていますが、景観法、ならまほろば景観まちづくり条例が何故か除外されています。
規制法規や開発指導要綱について貴殿はどういう考えを持っておられるか、ご教示ください。
3. 開発申請について
貴殿は、「都市計画法第29条第1項3号が適用され、開発許可は不要となります」と回答されています。
同法同条同号では「駅舎その他の鐡道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち、開発区域およびその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用および環境の保全を図る上で支障がないものとして、政令で定める建築物の建築に用する目的で行う開発行為」についてのみ開発許可を不要としています。
当会の会員は、ホテルの建設は上記開発不要の要件には該当しないと理解しています。貴殿が開発許可を不要とするならば遺憾ながら法的な対応をしなければなりません。
この点につきご主張があればお知らせください。
市長宛の「再度のお尋ね」文書(pdfファイル)
2017年3月13日:
文化庁に嘆願書を提出
当会代表の辰野が前滋賀県知事(ほか2名)と一緒に「文化庁」に陳情のため訪問しました。
奈良県は「国の名勝指定の変更許可」を文化庁から得なければなりません。許可されなければホテル建設は止まります。どう考えても許可するべき正当な理由はありません。担当官は粛々と当方の言い分をお聞きいただきました。
賢明な採択が下されることを切望します。
文化庁への嘆願書
(PDFファイルはこちら)
文化庁で説明した当会の主張
奈良県の主張する「高級リゾートホテル建設」の理由
県=「奈良にはホテルが足りない」
◎ 資料でお示ししたように、日本政策投資銀行の調査によれば、2015年度のホテル客室稼働率は、大阪市、京都市、神戸市と比べて奈良市は極端に低く、需給のバランスで客室が大幅に余ったとされています。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックを経た2030年においても、大阪市や京都市では客室が不足する予測のなか、やはり「奈良では余る」と試算されています。
仮にホテルの部屋数が足りないとしても、10室から20室のホテル建設が奈良市のホテルの部屋不足解消につながるとはとうてい考えられません。その事業のために、厳しい法律で守られてきた1.3ヘクタールもの県民の財産を私企業による「営利事業」として独占させることに「大儀」はありません。
県=「上質な高級ホテルなら環境が守られる」
◎ ホテルの質や規模の問題ではありません。「国の名勝地指定」など、厳しい規制で守られてきたこの地の規制を除外する「大儀」があるかを議論すべきです。この素晴らしい環境にある名勝地ならどのようなホテルを建ててもその物件価値は高く評価されるでしょう。しかし、それを「しない」ということで守られてきた先人たちの見識と自制こそ求められるべきものであり、それを遵守するのがむしろ自治体の努めです。
また当該地には、ムササビや野鳥など多くの動植物が生息していますが、学者による環境影響評価さえ行われていません。
県=「埋蔵文化財の調査は終了し、特段の埋蔵物は発見されなかった」
◎ 県はホテル建設予定地と称する敷地(特定できない=開示請求に対して、すべて墨で塗りつぶされた施設の配置図のみで公開しない)を平成26年11月5日から同年12月25日までの期間に発掘調査を行ったとあります。注目すべきは古代の須恵器、土師器、瓦片が発見されたことですが、調査は数日間のみ(隣接する万葉荘の2Fから調査地の様子を望むことができた)、このような短時間の調査では、地面の表面を掘り起こしたのみで、充分な調査がなされたとは考えられません。
憂慮すべきは、この直後に所轄機関「橿原考古学研究所」が奈良県教育委員会から奈良県「知事部局」に移管されたことです。本来、独立した立場で慎重に発掘調査を行うべき部署が、何ゆえこの時期に知事が直接人事権を発令し、事業方針を決定する組織にする必要があったかという疑問です。これについての回答はいまだ得ていません。
県= この計画に対して「反対者はいない。むしろみな喜んでいる」
◎ 県は奈良公園整備計画検討委員会(貴庁の担当官が「アドバイザー」として出席されている)において、県が住民説明を行う前から「住民の反対は無い」「むしろ賛成意見ばかり」であると説明されています。これは県による虚偽の説明です。このような「ホテル建設ありき」の「県の意向に誘導する」審議は不当です。民意の絶対的多数は「反対」です。住民説明会会場での発言者の意見の100%が懸念や反対でしたが、その事実を県は黙殺しました。さらに県は、「建設に賛成ありき」の説明会でなければ、以降話し合いは持たないとまで明言され、わずか二度の説明会以降、住民との接触を断絶しました。これを受けて、私たちは「高畑町住民有志の会」「奈良公園の環境を守る会」を結成しました。そして開始した「署名活動」における民意(3万筆以上)をお聞ききとどけください。
県=「奈良公園には、すでに旅館がある」
◎ 奈良公園には「江戸三」「青葉茶屋」などの旅館が存在します。しかし、これらは「法規制ができる前」に営業を始めていた業者であり既得権益者であります。規模も小さく施設が老朽化しているため、水道管や下水管などの修理・改築の許可を県に申請しても容易に許可がもらえないという現状があります。その一方で、同じ公園内に高級ホテル(規模は遥かに大きい)を新規に建設しようとすることに、既存の旅館経営者は大きな戸惑いと怒りを感じています。(しかしながら、彼らは、公園内の敷地を県から借りている弱い立場のため、県からの粛清を恐れて、県に対して直接不満の声を上げられません)
県はそれら既存の宿泊業者への支援を行い、まずその利活用を推進すべきです。
◎ 上高地のホテルや山小屋など、国立公園内の宿泊施設に関しては「自然公園法」によって主務大臣(環境省)によって適正に設置が認められているものであり、「都市公園」とはその主旨や条件が異なります。「山岳地帯」という地域の特性もあり、宿泊を伴う公園利用者の生命の安全性の観点からもその必要性が高く、奈良公園の場合とは、まったく異なった条件でもあります。
◎ 当該地からは商業ゾーンまで徒歩で10分以内の至近距離にあります。
ホテルの建設が必要とするのであれば商業ゾーンで計画すべきであり、当該地に建設する必要はまったくありません。
現状の商業ゾーンには、高さ制限や建蔽率、容積率などの建築規制が厳しく採算性が悪いため、ホテル経営が難しく、老舗の旅館(魚佐旅館)でさえ経営破綻しています。規制緩和を求めるなら、公園内ではなく景観に配慮した商業ゾーンでの規制緩和です。
県=「都市公園の利便施設として宿泊施設は認められている」
◎ 都市公園内において認められた宿泊施設は、運動公園や研修を目的にした施設(奈良県生駒市立「生駒山麓公園」など)であって、リゾートホテルは対象ではありません。奈良公園の利用者にとってリゾートホテルは必要ではありません。繰り返しになりますが、宿泊は規制区域外近隣の施設で十分まかなうことができます。
現在、都市公園法の一部改定のための法案が検討されていますが、これは、「保育所」などの福祉事業を念頭においたものであって、リゾートホテルはその対象ではありません。
県=「当該地に隣接して大きな建物がすでに建っている」
◎ 県が指摘する建物は「万葉荘」と思われます。およそ40年前NTT(当事:電電公社)の社員寮(保養所)として建てられたものです。数年前、NTTから辰野が個人資産として購入しました。この土地は、県が計画する当該地同様、「奈良市風致地区条例による第一種風致地区」指定による規制、即ち住居以外の用途使用は認められておりません。10室以上を有する宿泊施設ですが、代金を徴収して宿泊させる営業は行っていません。現在は、近しい友人との交流の場として利用しています。(キャロライン・ケネディ前駐日アメリカ大使や、ジャン・フランソワ・パロ駐日スイス大使、ラファエル・コント、スイス連邦上院議員議長など、多くの要人にもご利用いただいています)
*このように営利事業が認められない万葉荘に隣接し、さらにその数倍厳しい法規制(万葉荘にかかる規制は「風致地区条例」のみ)のある当該地において、県が選んだ民間事業者ならホテルを建設し営業が許されるという道理は百歩譲っても理解できません。
*この開発に関して、県が敷地の外溝や施設内整備(日本庭園の復旧)などに、少なくとも10億円を超える血税を投入して民間事業者の事業を支援することに県民は怒っています。ちなみに業者が県に支払う宿泊施設の借地料は月額1平方メートル当たり138円(455円/坪)、飲食施設103円(340円/坪)と常識を逸脱した破格であり、業者に対する利益供与は多大です。
土地の賃貸契約期間は10年とされていますが、県がいう高級ホテル建設に要する民間投資額を勘案すれば、10年での減価償却は現実的ではありません。更新することを前提にした建前契約となることは必定です。そのようなことになれば、貴重な県民の財産である景勝地を私企業の営利活動のための永続的な独占利用を許すことになりかねません。
上記のように「開発」に関してさまざまな問題を抱えた奈良公園内の当該地に、わずか10室から20室のホテルを建設することに、なぜ知事はそこまで固執するのか?
住民の疑念はさらに深まっています。
以上、現在知りえる限りにおいて、奈良県が示されている「現状変更」を求める根拠に対して、私たちの所見と反論を述べましたが、もしこれ以外に県が根拠をお示しになられた場合には、それに対する私たちの所見や反論をお聞きいただく機会が与えられることを重ねてお願い申し上げます。